私が中学受験をした20年以上前と比較して、今は中受に関する本や漫画が沢山あり、まさに百花繚乱の様相を呈しています。首都圏模試センターの報告によりますと、2022年春の中学受験者数は51,100名、受験率も17.30%を記録し、過去最高・最多となっておりますので、中学受験にに対する世間の関心が非常に高まっており、次から次へと中学受験に関する書籍が出版されているのも納得できる気がします。
(ちなみに関西圏はどうなのかというと、2022年度の受験者数17010名、受験率は9.8%で2023年度の受験者数はほぼ横ばいが予想されるそうです。少子化の影響もあって年々少しずつ減少する傾向にあるようです。)
私も、話題の中受小説や漫画はここ1年で結構読みましたので、忘れないように記録しておきたいと思います。どれも有名な本ですので、もう読んでしまったよという方も多いかもしれません。
勇者たちの中学受験
2022年11月出版。教育ジャーナリストのおおたとしまささんの著書です。現在、Amazonでベストセラーとなっており、大変話題の本です。中学受験最後の3週間にフォーカスして3人のお子さんとその家族の動向と心理を克明に書いておられます。事実に基づくお話という事で、受験した学校名や塾の名前等もはっきりと実名で書かれていて、衝撃を受けた人も多かったのではないでしょうか。
多くの人間が「第一志望校には受からない」という現実をつきつけ、親子の心理状況が悪化し、更には親子関係、家族関係までも崩壊する恐れがありますけど、それでもあなた達は我が子に中学受験させるんですか?という筆者の囁きが聞こえてくるような作品です。
冒頭にも書きましたが、現在の中学受験者数、受験率は過去最多です。首都圏では今後もこの傾向が続くと考えられ、我々親世代の中学受験よりも更に苛烈になっていると考えられます。我々親世代の感覚より現在の受験は厳しいという事をこの本を通して自覚させられました。教訓としては、柔軟に幅広い偏差値帯から受験校を探し全落ちは必ず回避する事と、お子さんが本人なりに努力して志望校の受験に挑戦できる事自体が尊いことであるという事でしょうか。「まさか」の事態が起こりうるので最後まで気が抜けませんね。
これを読んで覚悟が決まらなければ、中受はしない方が無難かもしれません。中学受験における保護者の心理状況のジェットコースターは絶対に誰もが通る轍なので…。
二月の勝者ー絶対合格の教室ー
小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて2018年より連載開始、現在も連載中の高瀬志帆さん執筆の漫画です。2021年にドラマ化されて、島津父(登場人物の父親)が話題となり、「島津る」という造語が一時流行りました。
この作品に出てくる凄腕塾講師の黒木蔵人の受験に関する知識やノウハウは、これから受験をしようという親御さんにとってもかなり為になると思います。漫画ですが、中学受験に挑む全ての方にとって読んで損はない作品と言えます。また、受験の厳しさはリアルで、教育虐待と家庭崩壊についても描かれていますが、比較的マイルドな表現であり、今のところどの登場人物に対しても救いのあるようなシナリオになりそうで読後感は悪くないです。
色々学びのある漫画なので、万人に素直にオススメできる作品です。
翼の翼
2021年9月出版。中学入学試験の出典としてもよく作品が取り扱われる朝比奈あすかさんの小説です。母親目線で物語が進んでいきます。中受経験のない母と中受経験のある父、そして低学年の時に模試で良い成績をとった息子、「もしかして、うちの子賢いんじゃ…?」期待が膨らむ両親…といった中学受験の初期アルアルから始まっていたように思います。
息子の翼くんは親の期待に応えたいと頑張るとても良い子です。しかし途中で教育虐待の描写も出てきます。主人公の母親の心情は非常に理解できるのですが、実際の行動には反面教師的な部分も多く「こんな風にならないように気をつけなければ」と思いました。
思い通りにいかない受験勉強の様子、両親の心理状況など非常にリアルでした。
下剋上受験―両親は中卒 それでも娘は最難関中学を目指した!
2016年12月出版。父親の桜井信一さんが著者です。2017年にTBSでドラマ化もされたのでご存知の方も多いかもしれませんね。「翼の翼」が母親目線、男子、低学年から塾通いの物語だったのに対し、こちらは父親目線、女子、塾なし、小5から参戦のノンフィクションです。
偏差値41の娘さんが桜蔭中学を目指す為に実際に使ったテキストのことや、どう言う風に勉強計画を立てたかなど詳細に書かれていました。お子さんに寄り添って一緒に試行錯誤しているお父さんの姿が非常に好印象でした。
娘さんが実際に受験をされたのは、10年以上前のようですが、今でも好評のテキストは当時から変わらず良いテキストだったようです。希、サピなど様々な塾のテキストが紹介されており、私でも聞いた事がある物が沢山載っていました。
コスパで考える学歴攻略法
2022年11月出版。noteで定期的に「週間金融日記」を執筆されており、Twitterでも有名な藤沢数希さんによる著書です。一気に読んでしまいました。どの部分を読んでも為になることしか書いてありません。本書の内容は、私もほぼ同意です。中受か高受かはたまた海外に進出か?どのルートに対してもコストの面を気にしながら如何であるかを説いておられるので、どうすべきか迷っておられる方にとっては、良い指南書になっているように思うのでオススメです。感情に訴えるような感じで「こんな風になるけど、それでも中受するの?」と言われるより、感情面は一切排除してデータを用いて理路整然と中受を考える本書の方が私は好きですw
厳密に言えば、当記事タイトルにあるような小説および漫画ではないのですが、本書もまた中学受験を考える上で助けになる書物なので、取り上げさせて頂きました。
本書の構成のおよそ6割が中受についての内容です。筆者ご本人も中受経験があり、親族のお子さんの勉強等についてアドバイスをされていたようですので、中受に関してはコスパのみならず、中学受験における各科目の特徴やポイント等まで書かれており、非常に参考になります。以下、個人的に中学受験情報として重要だと思った箇所を忘れないように羅列していきます。
・中受塾では週に1回テストがあり、中学受験を成功させる鍵はこの1週間単位の学習サイクルをいかに確立し、それをリズムよく回していくかである。 ・開成中学を狙うにはおそらくSAPIXが一番いい塾だが、そこで開成を狙うには少なくともSAPIX生の中で上位1割ぐらいには入らないといけない。 ・塾間の差はそれほど大きくない。とにかく、家に近いところに通う。 ・アラカルト入試(関西の社会を含めた4科目受験か3科目受験か選択できる入試)の場合は社会を受けた方が得をするようになっている。 ・社会が得意だと安定した得点源になる。社会は最後の追い込みで帳尻を合わせるより、最初から基本事項をしっかりと覚えてしまって得点源にしておくほうがいい。 ・算数に関しては塾に任せるか、さもなくば自分も算数の考え方を謙虚に学ぶという姿勢が必要。 ・より偏差値の高い中学に合格するだけが目的なら、方程式はやらないほうがいい。方程式を使えば簡単に解けるような問題は、難関中学の入試にはほとんど出ないし、算数のやり方でやった方が計算量が少なくてすむ。中学入試は時間制限がきついので方程式を使う方が不利になる。 ・中学受験の最大の果実は志望校に合格することではなく、毎週順位が出るテストを受けながら塾で授業を受け家庭で猛勉強し続けるそのプロセスにこそある。 ・慶應や早稲田は高校入試が一番入りやすい。 ・中学数学の範囲は非常に少ない。過酷な中学入試を乗り越えて難関中に受かった子供なら、中学の入学前の春休みに2、3週間勉強すれば基本的なところは終わってしまうほどの量。
筆者は、実用英語の習得の重要性を説いており、「中受するよりも小学校高学年〜中学生の間に2年程短期語学留学する方がコスパが良い」と考えていらっしゃるようですが、私個人的には「中受の方がコスパが良い」という結論になります。また、日本人として日本国籍を持って生まれたならば、一番コスパが良いルートは小中高すべて国公立で、尚且つ現役で実家から近い国公立大学医学部医学科に進学するというのが本書の言い分であると思いますが、このルートは相当難易度が高いと思います。特に、首都圏、関西圏、東海のある程度都会に住んでいるのであれば、難易度は更に爆上がりです。
結局どの道を選んでも「賭け」であることには変わりありません。その子の性質を見極めて、ゴール(志望大学合格)に向けてどのルートを辿るのが一番成功する確率が高いかを考えなくてはいけませんが、現役で国公立大学医学部医学科合格をゴールとするならば、成功確率が高いのは「中高一貫校に進学し、できるだけ早い段階で高校の範囲に着手する」事であって、高受をするのでは上記のようなゴール達成の可能性は高くないと私は考えています。コスパにこだわるなら、中受で近場の国公立の中高一貫校に行けば良いでしょう。私も自由な校風の中高一貫校出身なので、「内申点」の仕組みなどもよくわかっていませんし、「内申点」によっては希望の高校を受けることもできなくなる方がリスキーです。
短期留学については、今や日本にも様々な英語塾やオンラインスクールがあるので、本気でコスパを考えるなら、小学生の時から日本で毎日オンライン英会話する方が良いのではないでしょうか。例えば、オンライン英会話のNative Camp.なら1ヶ月6480円で何時間でも英会話のレッスンを受け放題です。毎日受け放題で、小学生〜中学生までの9年間続けたとしても、
6480円×12ヶ月×9年=69万9840円
です。2年間マレーシアやオセアニアに行って400万〜800万もかけなくても、英語で会話できるようにするという目的だけなら達成可能だと思います。また、最近は物理、化学、生物学などさまざまな学問を英語で学べるYoutubeや動画がありますので、探せば日本でも無料で学習可能だと思います。どちらにせよ本人のやる気と意志が最も重要であることには変わりないので、本人がやる気を出しやすい環境を提供するのが一番重要でしょう。
今後読みたいと思っている中受関連小説や本
今後は、「金の角を持つ子どもたち」と「きみの鐘が鳴る」を読んでみたいと思っています。特に「きみの鐘が鳴る」は子ども目線で描かれた作品という事で、非常に関心を持っています。
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